会長挨拶
  日本付着生物学会は、1972年6月17日に設立された付着生物研究会を前身とし、1996年4月1日から現在の名称で活動しています。1996年 9月10日には日本学術会議により学術研究団体として登録され、現在に至っています。
  本学会では、文字通り"付着生物"を扱う研究者間の連絡を図り、研究の発展に寄与することを目的としています。付着生物という比較的マイナーな生物群を対象としておりますので、会員数は200名ほどの小さな会ですが、前身の付着生物研究会からあわせると40年以上にわたって活動を続けてきました。現在、1)会員相互の研究連絡、2)学会誌「Sessile Organisms(旧、付着生物研究)」の発行(毎年原則2月と8月の2号)、3)関連学会・産業会などの連携による知識・技術の交換・互助、4)研究集会・総会(毎年3月に開催)およびシンポジウム、勉強会等の開催、などを学会の主催する事業として行っています。
  生物の基質への付着は、科学的にきわめて興味深い現象であるとともに、船舶や海中構造物への生物付着の防除技術を開発するため、あるいは付着物質や付着機序を産業に応用するため、そのメカニズムの解明が進められてきました。しかし、未だに多くの謎と可能性を秘めた現象です。"付着生物"と呼ばれる生物群は多くの分類群に跨がりますが、その大半が水産有用種とはなっていないため、また、基質に強固に付着し、多くが群体性で個体の識別が難しいなど、定量的な採集や測定が難しいこともあり、生態学においても研究例の少ないグループです。しかし、その生物量はおそらく膨大であり、海藻類や貝類、甲殻類などの水産有用種と付着基質や餌料を競合する意味でも非常に重要な生物です。東日本大震災後の東北沿岸域でも、付着生物の動態は、復興しつつある養殖対象種との関係性などで注目されつつあります。付着生物研究は、水産海洋分野における最後のフロンティアの一つと言っても過言ではないかもしれません。
  付着生物研究が生物付着の防除技術の開発や付着物質の産業への応用という産業会からの要望によって進められてきたこともあって、本学会には企業の方が多く参加されています。昨今、各界で盛んになりつつある産学連携を先取りした学会とも言えます。本学会はまた、会員数の割には毎年の総会・研究集会への出席数が多く、特に懇親会への参加率が高いという特徴を有しています。これは、本学会のアットホームで居心地の良い雰囲気によるものです。このような素晴らしい特徴を損なうことなく、付着生物研究の新たなニーズを発掘することによって本学会の重要性をさらに高め、世代交代を進めながら本学会を益々発展させていきたいと考えています。会員の皆様の、さらに一層のご理解とご協力をお願いするとともに、付着生物や付着生物現象、付着生物の生態系における役割や産業への利用、などに関心のある多くの方々の本会へのご参加、ご加入をお待ちしております。

日本付着生物学会長  河村知彦
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日本付着生物学会事務局
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